スカイラインの南へ
ブルーリッジ・パークウェイは、山を越えるための道ではない。山に長く留まるための道である。
バージニアの山旅は、しばしばシェナンドー国立公園から始まる。フロントロイヤル、ソーントン・ギャップ、スカイランド、ビッグ・メドウズ、ロックフィッシュ・ギャップ。スカイライン・ドライブを走ると、ブルーリッジの尾根と谷が一気に見えてくる。けれど、その南端で旅を終えるのは惜しい。ロックフィッシュ・ギャップの先には、ブルーリッジ・パークウェイが続いている。
ブルーリッジ・パークウェイは、国立公園局が管理する景観道路である。全長四六九マイルにおよび、バージニアからノースカロライナへ、山の稜線と谷を長くつないでいく。だが、このページではバージニア側を中心に読む。シェナンドー国立公園南端から、ピークス・オブ・オッター、ロアノーク、ロッキー・ノブ、マブリー・ミル方面へ。ここには、スカイライン・ドライブとは違う、もう少し生活に近い山の道がある。
スカイライン・ドライブは、国立公園の中を走る。ブルーリッジ・パークウェイは、もっと長く、もっと広く、山の文化、谷の町、歴史的な水車、宿、食事、音楽、工芸、ローカルな食卓を結んでいく。スカイラインが「山の展望」なら、パークウェイは「山の暮らしと道」である。車を走らせるだけでなく、途中で町へ下り、宿に泊まり、朝の霧を見て、水車の前で止まる。そういう旅が似合う。
ロアノークは、その中心的な都市である。ミル・マウンテン・スター、トーブマン美術館、ホテル・ロアノーク、鉄道の記憶、マーケット、ブルーリッジ・パークウェイへの近さ。ロアノークに一泊すれば、山の道はただのドライブではなく、都市と自然の往復になる。朝に美術館を見て、午後にパークウェイへ。夕方にミル・マウンテンから町の灯りを見る。これがロアノークらしい山旅である。
さらに南へ進めば、マブリー・ミルがある。国立公園局がマイルポスト一七六の名所として案内する古い水車で、地域観光ではブルーリッジ・パークウェイで最も写真に撮られる場所の一つとして紹介される。ここは、山の風景が一枚の記憶になる場所である。水車、木造建物、池、森、季節の色。車を降りて、ゆっくり見る価値がある。
ブルーリッジ・パークウェイを走る時、最初に忘れたいのは「何マイル進んだか」である。長い道であるため、つい距離を測りたくなる。だが、この道は移動の効率を競う場所ではない。展望地で止まり、雲の動きを見る。曲がり道の先に山が開く。森の中をゆっくり走る。ときどき谷の町へ下りる。その連続が旅である。
バージニア側のパークウェイは、スカイライン・ドライブの南端、ロックフィッシュ・ギャップから始まる。シャーロッツビルやウェインズボロから入り、ロアノークへ向かう旅は、美しい。途中にピークス・オブ・オッターがあり、アボット湖と山の宿がある。ロアノークでは、山と都市が接近する。さらに南へ進むと、ロッキー・ノブやマブリー・ミルが山の暮らしの記憶を見せてくれる。
この道では、天候が旅の主役になることもある。霧が出る。雨が降る。冬は道路状況が変わる。落石や工事、閉鎖の可能性もある。国立公園局の道路状況を確認し、無理をしないことが大切である。山の道は、計画通りに進むためではなく、条件に合わせて走るためにある。
食事と燃料も考えたい。パークウェイ上に都市のような便利さはない。どこで下りるか、どこで食べるか、どこで泊まるかを先に考える。ピークス・オブ・オッター・ロッジ、ロアノーク、メドウズ・オブ・ダン、フロイド方面など、拠点を決めると旅は安定する。山道の旅では、余裕こそが安全であり、贅沢である。
ピークス・オブ・オッターは、ブルーリッジ・パークウェイの旅で非常に使いやすい。山の中にありながら、ロッジ、湖、トレイル、食事、ピクニック、キャンプが近い距離にまとまっている。ここに泊まれば、夕方の湖、朝の霧、山の静けさを味わえる。日帰りで通過するより、一泊したほうが記憶に残る場所である。
ピークス・オブ・オッター・ロッジは、ピークス・オブ・オッターを最もわかりやすく体験できる宿である。公式・地域観光情報では、住所は八五五五四 ブルーリッジ・パークウェイ、ベッドフォード、マイルポスト八十六付近、電話は八〇〇・五四二・五九二七または八六六・三八七・九九〇五と案内されている。ロッジの客室からアボット湖を望めることが、大きな魅力である。
食事は、ピークス・オブ・オッター・ロッジのレイク・ビュー・レストランが中心になる。公式情報では、地元食材や地域の料理を意識した食事が紹介されている。山の宿では、食事の選択肢が限られるため、営業日と予約、季節営業を必ず確認したい。山の中で食べられる安心感は、旅の質を大きく左右する。
水車の記憶
マブリー・ミルでは、山の暮らしが一枚の風景になる。
マブリー・ミルは、ブルーリッジ・パークウェイの中でも特に象徴的な場所である。国立公園局はマイルポスト一七六の名所として案内し、地域観光は、パークウェイで最も写真に撮られる場所の一つとして紹介している。水車、木造建物、池、森、季節の光。たしかに写真を撮りたくなる。だが、写真だけで終わらせるには惜しい。
マブリー・ミルの価値は、山の暮らしの記憶にある。水を使い、木を組み、穀物を挽き、地域の生活を支えた場所。観光地として美しく整えられた現在の姿の奥に、山の仕事と技術がある。車を降りて、建物の周りを歩き、水の流れを見る。そこで初めて、マブリー・ミルは絵葉書ではなく、山の文化の一部として見えてくる。
マブリー・ミル・レストラン・アンド・ギフトショップは、地域情報で二六六 マブリー・ミル・ロード、メドウズ・オブ・ダン、電話二七六・九五二・二九四七と案内される。食事や営業は季節により変わるため、公式・地域情報を確認したい。山道の旅では、ここで食べるか、メドウズ・オブ・ダンやフロイド方面で食べるかを事前に考えるとよい。
訪問前の確認
ブルーリッジ・パークウェイは、道路状況を見てから入る。
ブルーリッジ・パークウェイは山の道路である。天候、工事、落石、倒木、季節閉鎖、災害復旧で通行条件が変わることがある。国立公園局公式サイトで道路状況を確認してから旅程を組みたい。特に冬季や大雨の後は注意が必要である。
食事と燃料は、山に入る前に確認する。パークウェイ上には都市のような便利さはない。ロアノーク、ベッドフォード、メドウズ・オブ・ダン、フロイドなど、どこで下りるかを考える。宿泊地が決まっていれば、夕方の無理な運転を避けられる。
山道では、野生動物、霧、急な天候変化に注意する。展望地では安全に車を止め、車道に出ない。写真のために崖際へ近づかない。景色の美しさに気を取られすぎず、運転者は道に集中する。
そして、旅程を詰めすぎないこと。ブルーリッジ・パークウェイでは、予定通りに距離を稼ぐことより、良い場所で止まれることのほうが大切である。ピークス・オブ・オッターで長く休んでもよい。ロアノークに戻って美術館を見る日にしてもよい。マブリー・ミルで天気が悪ければ、早めに宿へ向かう。山の道では、余白が旅を守る。